ポルトガルのパン・デゥ・ロー(Pão-de-Ló)ルート
ポルトガルは、グルメとスイーツにあふれる国です。これはまさに、テーブルに付いている人達に提供し喜ばせるルシタニア人の特性です。 まごころのこもった食事の総仕上げの印象を与えるか、真昼の休憩に彩りをもたらす数多くの伝統的なケーキとスイーツのなかで、ポルトガル人を一つにするごちそうがあります。そう、それがパン・デゥ・ロー(Pão-de-Ló)です。
クリーミーな方か乾いている方かの違いはあるものの、それでいていつもふわふわしている・・・これが少なくとも18世紀に遡るケーキです。 古来のポルトガルのバージョンは、ジェノア人であるジョアン・バティスタ・カボーナによって考案されたジェノアズ(Génoise)か、ルネッサンス時代のイベリア人の製造した「スペインのパン」と称されたものがルーツと考えられています。 確かなことは、このスポンジのごちそうがすべての文化・世代の人々をまだ感嘆させているということです。
レシピは、最も基本的なバラエティでは非常に単純です。 3つの必須材料があります。それは、卵、砂糖、そして小麦粉です。 このバージョンにはイーストは入っていません。溶き卵で砂糖を溶かし、小麦粉を加えてオーブンで焼きます。 ここにはパン・デゥ・ロー(Pão-de-Ló)の宝物があります。国の北部から中部に至るまで、数多くのバリエーションがあり、広く全国で知られたケーキで、ポルトガル人は誰もが大好物です。
レモンの皮をケーキに加えることで有名な、国の北部にあるギマランイシュからスタートします。 25キロメートル南に向かった先のマルガリード小教区、フェルゲイラシュでは、パン・デゥ・ロー(Pão-de-Ló)には、木製の撹拌器を使った砂糖菓子と、陶器製のドーム状オーブンや粘土型で焼くのが特徴です。 そのすぐ西側のヴィゼーラ(Vizela)の街には、最も特徴的なパン・デゥ・ロー(Pão-de-Ló)であるボリニョール(Bolinhol)です。形が長方形で、砂糖シロップで覆われていることで異彩を放っています。
Pão-de-Ló de Ovar ©Emanuele Siracusa/Centro Portugal
さらに南には、デゥーロ川とタメガ川の間のクロスロードには、それを作るための伝統のレシピがあります。材料は10分間手で捏ねられ、粘土オーブンで焼かれます。 アロウカ(Arouca)では、パン・デゥ・ロー(Pão-de-Ló)は、特別な特徴をもって提供されます。ヴィゼーラからのシュガーシロップに加えて、スイーツは、スライスして包装され、市販されています。 特別ふわふわしてクリーミーな舌触りに関して海岸沿いに比肩するものはありません。しかし、パン・デゥ・ロー・デゥ・オヴァル(Pão-de-Ló de Ovar)(2016年に原産地保護指定を受けた)は、中がしっとりとしていて、焼き上げ温度は、ひとえにペストリー職人の熟練と判断によります。
イリャボエリアでは、パン・デゥ・ロー・デゥ・ヴァゴシュ(Pão-de-Ló de Vagos)は、オレンジのアクセントと塩味が他との際立った違いですが、普段は売られていません。 フィゲイロ・ドス・ヴィニョス(Figueiró dos Vinhos)で、ケーキの見た目はまさしく感動ものです。ブンド型で焼き上げ、リング型の見た目をしています。 ペニシュの近く、アルフェイゼラオン(Alfeizerão)では、パン・デゥ・ロー(Pão-de-Ló)はワインブランデーの形でアルコールが入っています。中心部にはくぼみがあり、外側はザクザクしていて大抵のスポンジケーキより低いものです。
リオ・マイヨール(Rio Maior) パン・デゥ・ロー(Pão-de-Ló)は、一層低く直径20~25センチメートルで、他のものよりこんがり焼き色がついたものです。 サンタレム(Santarém)近くのアルピアルサ(Alpiarça)のそれは、一番軽いものです。スライスすると、クリームが流れ出し、見た目がよくインスタ映えします。 ポルトガルでは、非公式な「パン・デゥ・ロー・ア・ブラジレイラ(Pão-de-Ló à Brasileira)」(ブラジルスタイルのパン・デゥ・ロー)も見つけることができます。卵の使用量が少ないので、ユニークな食感です。
ポルトガルの外に目をやると、日本の長崎のお土産であるカステラがポルトガルのケーキとよく比べられます。ポルトガル商人によって何世紀も前に輸入され、英語話者の国では「スポンジケーキ」と呼ばれますが、パン・デゥ・ローと同様の見た目をしています。
これが、同じレシピで様々な味が楽しめる北部から中部までの旅ですが、確かなことが1つあります。ポルトガルのどこでパン・デゥ・ローを食してもその土地特有の味覚、砂糖菓子の歴史と進化、そしてこの上ない喜びを感じることができることです。 楽しみましょう!